志の輔らくごのごらく(5)「朝日名人会」ライヴシリーズ46 「新・八五郎出世」おすすめ度:![]()
(2007-12-23)
安心して聴いていられる。破綻のなさにおいて現代最高の落語家であると思う。ネタは『八五郎出世』=『妾馬』の「結論」を志の輔さんが独自にアレンジして出来た『新八五郎出世』だが、このアレンジの仕方が強い安心感をもたらしてくれるので、朝日名人会のトリネタとしてこれは全くふさわしいなと思う。
まくらでいわゆる「日本人ジョーク」を引きながら、私たちってそういう風な価値観をもった人種でしょう、と本編への複線をはっておく。上手い。もはやそういう風な価値観をもった人間ばかりではない現代の日本でこのような噺をしていても、違和感がなくなってくる。それから、八五郎の愚かしさ、だけど憎めなさ、というか愛らしさのようなものを、各場面で少しづつテイストを変えながら爆笑の連発のもとに表現していく。そして、終盤にむかうにつれて家族愛的な人情にうったかけまくり、ほろり、とさせられるメッセージを押し付けがましくなく語っていく。すごい。このかつてはあったように想われ今もあればいいなと願われしかしなかなかありがたり暖かな人情が、深層心理に響いて感動せずにはいられない。
たとえば師匠談志のような、人間のリアルさのみを徹底して追求した結果、ときどき寒気がしてきたり、ほとんど狂気のような言葉が発せられたりすることは、志の輔さんにはない。だが、そうした不安感をもたらす圧倒的なリアルさとは異なるけれど、しかしほんわかとしたやさしい気分をもたらしてくれる彼特有の作品解釈のリアルさによって、最後のオチまで楽しい気分をもたらしてくれるのが、志の輔落語のなにより素晴らしい長所であるな、とこのCDを何度か聴いてみて、改めて実感した。
(2007-12-19)
Sonyからの5枚目になるCD。今回も「志の輔らくご」の独特な世界、住人が語り手の魔術によって江戸から現代に時空を飛び越えてコンテンポラリーに蘇っている。いつの時代にも、親子、兄妹、(身分は違っても)夫婦愛は普遍。単なる古典落語、人情噺を語り継ぐことではなく、そこに「志の輔らくご」のDNAを植え込んだ新古典の誕生だ。コンテンポラリー落語の進化(新作、創作も含めて)は、ひとえに立川志の輔の努力に負うところが大だ。全落語ファンにお勧めの一枚。また、志の輔のライヴにも足を運んで欲しい。落語は、やはり一期一会の」「生」に限る。その一端を垣間見せた好盤がこの一枚。購入することを是非ともお勧めしたい。