Doo-Bop本作は楽しませてくれるが、リリース以来あからさまに批判されてきた。評論家たちは、マイルスのような天才は古典的な曲(ようするに本作とはちがう音楽)でキャリアの幕を引くべきだと期待していたからだ。そして悲しいことに、イージー・モ・ビーのラップは、マイルスのすばらしさを称えてばかりいるリリックによって、“ありきたり”という言葉に新たな意味を加えているだけだ。とは言え、そうした欠点にもかかわらず本作はいまだに、このジャンルの多くのアーティストを打ちのめしている。その理由はなんと言っても、マイルスが最期まですばらしい演奏を聴かせてくれるからだ。
本作は名作ではないが、とことん楽しめるアルバムだ。この巨匠が人生の最期の日々に新たなジャンルに挑んだ音に、腰を下ろしてじっくりと耳を傾けようではないか。そして、もし彼が生きていたら、マッシヴ・アタックのようなバンドと共演して彼が鳴らしたかもしれない音に思いをはせよう。(Phil Brett, Amazon.co.uk)
おすすめ度:![]()
(2008-12-17)
ジャズ界最大の巨匠、マイルス・デイビスの遺作となったこの一枚。
巨匠は常にアヴァンギャルドであることをやめなかった。このアルバムでは、新進気鋭のヒップホップアーティストと組んで、ヒップホップジャズともいうべき独自のサウンドを展開してみせる。マイルスのトランペットはヒップホップに呑み込まれることなく鋭く冴え渡り、いささかの衰えも感じさせない。このジャズとヒップホップの融合というコンセプト自体、後にアシッドジャズというカテゴリーを生み出した。そう、巨匠は最後まで未来を志向していたのだ、感服。
惜しむらくは、コラボレーションしたヒップホップアーティストがショボいこと。MCもバックトラックもなんとも安っぽい。ラッパーのイージー・モービー、誰それ?って感じで、もっと著名なプロデューサー・MCと組んでいたら間違いなく大傑作になっていただろうに。ランDMC、パブリックエネミー、アフリカバンバータなど、当時大御所のヒップホップアーティストはいたはず。そういうアーティストとの、巨大な才能同士のぶつかりあいが聴きたかったな、というのは今ではもう叶わぬ夢か。
とにかく死ぬまで前衛であり続けたマイルスに敬意を表し、また僕が最初にジャズを聴くきっかけとなったアルバムでもあることに感謝の意味を込めて4点。
(2008-08-07)
大好きな1枚です。
秋に聴きたい「Mystery」です。秋の枯れ葉の中を歩いているような気分になります。
ジャズとヒップホップとマイルス!がしっかり詰まっています。
(2006-11-20)
ジャケットを見て思わず買ってしまったCDです。
ライナーノートに書いてあったのですが、
実はMiles DavisはこのCDの収録曲のうち
6曲を仕上げた段階でなくなったそうです。
プロデューサーのEasy Mo Beeが、
アルバムとして出すのに必要な残りの3曲を
Milesの遺稿ともいえる未発表の音源から選び出し、
そしてMilesがOKを出すと思われるようにリミックスしたそうです。
どの曲かはここには書きませんが、
ライナーノートを読む前に一度聞いてみて
その3曲を探し出すのも面白いかもしれません。
自分は分かりませんでした。
(2006-10-10)
ラップミュージシャンのイージー・モービーが作ったバックトラックにマイルスがトランペットを吹いたアルバムです。
サントラの「ディンゴ」で一瞬盛り上がった4ビート神話をあっさり覆す、ラップ/ヒップホップサウンドです。この、いわゆるストリートサウンドについては唐突なもののようにも思えますが、実は88年頃のライブから、マイルスは自分のバンドに「異質なもの」としての「ストリートサウンド」を加えています。具体的にはエレクトリックパーカッションのジョン・ビガムなのですが、マイルスはビガムに対しては「好きなように」プレイさせていたようです。このことについてマイルスは「時折、自分の音がひどく古くさく感じる。耳を覆いたくなるほどだ。そんなときにジョン・ビガムのストリートサウンドが救いになる」とコメントしています。
ドゥーバップのサウンド自体は、イージー・モービーのものであって、ディンゴ同様にマイルス自身は深く関与していません。
最晩年のこの年、マイルスのサウンドは題材となる音楽(フォーマット)がなんであろうと、マイルスがトランペットを吹けばマイルスの世界になるという圧倒的な存在感を示したともいえるのではないかと思います。
多くの人が指摘するように「マイルス・デイビス」という音楽なのだと思います。。
(2006-07-27)
マイルスの遺作である。ヒップホップである。思えばマイルスはその時代の最先端のすぐれたブラックミュージック(ジミヘン、スライ、プリンスなど)に影響を受け、自らの生み出すサウンドに積極的に取り入れてきた。したがってブラックミュージック最大の発明であるヒップホップをマイルスがやるというのはごく自然であるし、一曲目を聴けば本当にクールなヒップホップサウンドにマイルスが乗せている言語とはラウンド ミッドナイトの頃から(それ以前からも)一貫しているマイルスのペットであり、マイルスをマイルスたらしめているあのサウンドであり、ラップが乗らなくともマイルスの言語が乗ればそれは超クールなヒップホップとして成立していて、やっぱりマイルスは凄いとなるのである。ラッパーがラップを乗せている曲もあるが、インストのヒップホップとしては最高峰のアルバムだろうし、生涯クールでカッコイイを貫いたマイルスの生涯最後のクールでカッコイイ、なおかつヒップなアルバム。マイルスは見事に有終の美を飾ったのである。