There's a Riot Goin' Onおすすめ度:![]()
(2008-06-06)
楽器を始めて約35年、ジャンルを問わず洋楽を聴き始めて約30年になりますが、どれが最高だったか、意義のある音楽(音楽そのもの、歌詞、あるいはそれらトータル的な表現としてメッセージ性をどれほど有する)だったかと聴かれれば悩みに悩んでコレを挙げます。
当時の時代背景等々、アメリカ社会についての勉強は必要ですが、とにかく他の方のレヴューにもあるとおり、音楽的にもロックとファンクの融合を図ってきたようにアメリカ社会におけるエボニー&アイボリーの融合を切望し未来は開けるとしていた夢は全く実現不可能なのだという絶望感がダイレクトに伝わる、言ってしまえば重い作品。ただし、当時のマイルスにも多大な影響を与えたとおり、Pファンク、JBと並び賞賛されるべく“ファンク”を確立した音楽的なインパクトも前述のメッセージ性もあって相当なもの。リズムボックスを使っていながら魂、腰から発せられるグルーヴはこの作品でしか接することが出来ないものです。
こんなこと考えてたらクスリ漬けになるわなっという静かなる“暴動”なのです。相当病んでた時期の作品で、これ以降ダメになったと思ったらゾンビのような復活を繰り返す訳ですが、その後のベースの概念を変えたチョッパー(スラップ)奏法を編み出したラリー・グラハムを擁したスライ、前後の作品もさることながらどれか一枚というのであれば是非本作からその世界に浸ってほしいです。
なお、レコード盤になっているので、強烈な音の太さ、よい意味でのこもり方をするので、このウネるグルーヴの感じ方はデジタルのものとはかなり違うはず。音の塊でグイグイ押されます。とはいえいいアンプとスピーカーで古い音を直接感じて圧倒されていただきたい。そう思います。20世紀のブラックでは革命的な作品です!
(2007-04-23)
前作"Stand!"がポジティヴな夢への「希望」を描いたアルバムであれば、このアルバムは「絶望」という言葉が1番相応しいかと思う。重く暗澹とした雰囲気がアルバム全体を覆い、ネガティヴな言葉で綴られた歌詞が痛々しいほど突き刺さってくる。一役時代の寵児とまで駆け上がった彼がこの作品を発売するまでに一体何があったのだろうか?それはこの作品が発売された時期と照らし合わせると見えてくるような気がする。公民権運動を率いたMartin Luther King, Jr.(キング牧師)の暗殺や、各地で起こる暴動。ベトナム戦争の激化やゲットーで暮らす黒人達の貧困。様々な社会問題がアメリカで発生していた。"Stand!"にて彼が説いた理想とする世界はそこには無かった。勿論彼が常用していた麻薬の影響もあるだろうけれど、Sly Stoneを絶望と諦めに満ちさせてしまう現実がこのアルバムを生み出してしまったのでは無いか?と僕は思う。
このアルバムはSly Stoneが殆ど1人で創ったもの。ドラムスに関してはリズムボックスを使用し、その他の楽器演奏は殆ど彼が弾いている。
初めてこのアルバムを聴いた時、とてつもない嫌悪感に襲われた。全体を通して倦怠感に満ち溢れ、これがファンクの名盤か?と思わせるような退屈なビートが鳴り続けていた。そして何よりもそのサウンドは僕を不安にさせた。もう聴く事はないだろうとその時思ったけれど、ふと数日経ってこのアルバムが聴きたくなった。何度かそうして聴いていたら、この不快なサウンドが妙に心地良くなってしまった。この作品は麻薬のような深い中毒性を持ち、ダウナーなノリがもたらす心地良さに、いつの間にか身体が依存してしまっている。これだけポップスとかけ離れた位置にいるアルバムが名盤と呼ばれる理由はそんな危険な魔力を潜めた作品であるからだと僕は思う。
(2003-04-28)
70年台に入ると、愛と平和を謳うリベラル勢は敗北、そしてベトナム戦争は継続。同時に、保守権力による黒人ゲットーへの弾圧が激しくなる。当然の結果、全米各地で黒人達は暴動を起こす。だがそれは往々にして、自らのコミュニティーの破壊、という結果にのみ終わった。ヒッピーカルチャーの全盛に作られた前作“Stand!”の陽気さと溌剌さは、この“There’s a Riot Goin’ On”にはない。Sly Stoneは自己の内面を凝視するようにつぶやき、時に唸る。サウンドは壊れやすいガラス細工のように繊細だ。パーティーで踊る類のファンクではない。独り部屋に閉じこもり聞く音楽だ。これほど綿密なファンクが作られることはもうないかもしれない。余りに影響力の大きい、そして音楽史上忘れられてはならない大傑作である。