荒野へ (集英社文庫)

商品イメージの拡大荒野へ (集英社文庫)
Jon Krakauer
佐宗 鈴夫
集英社
グループ:Book
ランキング:11643位
価格:¥ 700
発売日:2007-03
在庫:通常24時間以内に発送

カスタマーレビュー

おすすめ度:

ストイックな生き方

(2008-12-27)

頭でっかちで視野の狭い若者の早過ぎる死。

準備不足で大自然に旅立った、未熟者の末路。

家族のことや周りの人の迷惑を考えない、自分勝手な旅。


色々と疑問に感じることの多かった本書ですが、読み終わってみて、これがノンフィクションで有ることを思い出す。

本書の主人公『クリス』のように、ストイックなまでに自分の人生哲学を追い求め、極限まで自分を追い込み、命を賭けるまで一生懸命になれるものが自分にあるだろうか・・・。

リアルタイムでそんな人物がいたことに、人生というものを考えさせられる一冊であることは間違いありません。

アラスカの地へ

(2008-10-27)

実話に基づく話はとても興味が惹かれます。
クリス・マッカンドレスはまだ若き青年であり、チャレンジ精神旺盛な若者であったことは言うまでもありませんが、私が驚いたのはクリスは本当に自由な場所を求めてアラスカの地へ辿り着いたにもかかわらず、日記にはアラスカの事よりもその日捕まえた食糧の事のほうが詳細に書かれていたことです。
クリスと同様私たちも日々不本意な出来事に遭遇したり、人々の争い事に巻き込まれたりと煩わしさを感じることがありますが、もし万が一私がアラスカへ行って土地が与えてくれる食糧で生きていかなければいけないとしたら、喜怒哀楽を感じる前に毎日の食糧確保に一喜一憂する毎日を送っていると思います。
アラスカでのクリスの日記の内容が、食糧の事が大半だったことに頷けます。

リアルな自分探し…ではない

(2008-10-24)

この作品…
読むタイミングを逃していました
ずっと心のどこかに引っ掛かっていた作品です
多くの人に読まれ…賛否両論あったこのノンフィクションが
一体どういう風に自分の心に響くのか…

内容は一行で書けます

「恵まれた世界で育った青年が、何もかも捨てアメリカを2年間放浪し、アラスカで死んだという実話」

それだけです
本当にそれだけなのです
だから
この青年をナルシストや無謀な若僧と非難した人
逆に彼は現代のヒーロだと賞賛した人
さまざまなのです

しかしこのリアルな世界は妄想と違って人々の胸に深く刺さります
そう…みんな刺さったのです

その傷を「イタイイタイ」と叫ぶ人
その傷を「生きた勲章だ」と思う人
その傷を「何ともないよ」と感じる人

みんな感じ方が違います
男性と女性でも感じ方は違うでしょう
それでいいのです

わたしが残念に思ったのは
彼はこの旅でひとつだけミスをします
自分では気付かないミスです
あと少しだけの知識があれば
彼はまだ旅を続けていたかもしれません
そうすれば、この本は自身の手で書かれ
優秀なノンフィクションライターとして賞賛されていたでしょう

ひとつ言っておく事があるとすれば
よくある「自分探しの旅」ではないという事です
彼は自分を分った上で
自分のすべてを開き
自分の居場所を求めに行ったのです
最終的には自分を捨てる旅になってしまったのですが
彼は満足だったと思います
映画化になったこの作品、先に本を読んで正解でした

最後にわたしが一番心に残った一文を記しておきます
彼が最期を迎える事になった荒野(アラスカ)へ踏み入る前の記述です



「半分しか入っていないバックパックの中身で
 一番重いのは…本だった」

悲惨な物語を救う母の言葉

(2008-10-17)

中流以上の家庭に育ち、大学も優秀な成績で卒業しながら、行く先も告げず家を出たクリスが、アラスカの荒野で死体として発見されます。しかも、その死因は飢え死にと言う悲惨さです。

作者は、クリスの育った環境や、アラスカに入る直前に会った人々の話を聞き、自らの生き方と対比しながら、彼の死んだ本当の理由を求めて行きます。

構成の上手さもあり、この謎に向かって読ませます。
アメリカの各地を転々とし、アラスカに向かって突き進みます。
クリスが求めたものが何であったのか?

最後に母親の言葉が、彼の死を、この悲惨な物語を救います。
「クリスがいたのがここで、よかったわ」
「たしかに、彼はこの川の畔で暮らし、この一画に立ってたのね」

クリスは永遠の旅に出た

(2008-09-16)

ショーン・ペンが脚本・監督した新作「イン・トゥ・ザ・ワイルド」の評判が高いので、遅まきながら原作(実話)を読んでみた。

一人旅の果てに荒野に置き捨てられたバスの中で餓死したアメリカ人青年の、『青臭さ』と斬って捨ててしまうには余りに悲壮な生き方に時折読み進むのが辛くなる程の息苦しさを覚える。

死線を彷徨った冒険から生還した過去を持つ著者が、その一線を越えて向こう側の世界に行ってしまった主人公クリス・マッカンドレスに執拗な関心を持って取材を続け、次第に彼の半生と旅の軌跡、更には真の死因を浮かび上がらせていく。その過程で過去に荒野で消息を絶った人々のエピソードや登山家である著者自身の体験を織りまぜながら大自然の冷徹なまでの厳しさを淡々と描きつつ、同時にそうした厳しい自然に身を投じずには居られなくなった人々の共通項と重ね合わせながらクリスの内面に潜む精神世界に肉薄して行く。

クリスは精神的にどこまでも内省的であった分、それに抗うかの様に肉体的には外へ外へと向かって行くのだが、彼が踏み込んだこの果てのないラセン階段も、その肉体が滅びることで遂に終止符が打たれる。いや正確には肉体が滅びる直前、死を覚悟したときに彼はようやく平穏な気持ちで両親に心を開けるようになったのではないかと思われる。皮肉にも自らの生命と引き換える事によってしかその不安定で鋭敏な神経を支える事が出来なかったこの若者の、文字通り命を賭した心の葛藤を『甘え』の一言で済ませてしまって良いものだろうか。

読了後に何とも言えない重苦しさが体全体を覆うが、読んでおいても損はない。

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