Fooled by Randomness: The Hidden Role of Chance in the Markets and in Lifeおすすめ度:![]()
(2009-01-01)
著者はウォール街の投資家なので、本書は投資関係のものとも読めるが、実際は人生論的な要素もふんだんに散りばめられた、小さな枠にとらわれない著作である。統計や確率論などに精通した読者が特に新しい事を学べる分けではないが、多彩な好奇心に彩られた読書歴を持つ著者が、社会における様々な現象がいかにランダム的要素に影響される事が多いかなどを雄弁に、歴史、科学、哲学、数学、心理学など様々な角度から醸し出す。好奇心を刺激してくれる大変な良書だ。
市場の動きなど、特にランダムな要素が大きい世界で陽の目を見る成功者の殆どは、生存バイアスの結果であるとの指摘や、株式投資などにおいてノイズとシグナルの区別を付ける能力の無いジャーナリストなどによる報道に惑わされることの愚かしさなど、的確に示唆を与える。ただ、モンテカルロが何を意味するか全く分からないような読者にまで説得力がある説明が細かくなされているかといえば、必ずしもそうは思わない。そのような読者は、運の女神も、結局は準備万端な人間を報いる事が多いという、著者の前書きの言葉を肝に命じておくべきだろう。そして、著者自身はサブプライム後もかなり儲けたらしいが、どのような戦略をもって資産を運用しているなどの具体的なヒントは書いていない。ズルいな(笑)。
理系の素養がある読者にとっては、主張自体もっともであり、特別に啓発されることもないと思うが、こじつけの事後評価ばかり重要視される現実世界に生かざるをえない現代人としては、雑音に惑わされず、運命の流れと割り切ることの大切さを思いださせてくれる面白い本である。
(原著2版へのレビュー)
(2008-02-11)
本書の日本語版『まぐれ』のレヴューに対して、
僅か、1日で、反対票8票が投じられたのは
非常に興味深かった。
この事から推測できるのは、以下の2点。
1.多くの人が「自分は馬鹿では無い」と思い込みたがっている。
少なくとも、その様な「信念」との親和性が強い傾向が見られる。
2.多くの人が「自分は、幸運に頼るしか能が無い『能無し』だ」とは、
考えたがらない傾向が大きい。
少なくとも、その様な「信念」とは相容れない「自我」を持つ様だ。
「相場心理」の問題は、此処までとして、システム・トレーディングに
関する本で、「破産の確率」や「其の計算方法」が書いてない本は
「駄目な本」だと言う事が、日本人大衆にも判るように為るのは、
5年後か、遅ければ10年後に為るかも知れない。
「『破産の確率』の様な『ネガティヴ』な事を考えて居ちゃ駄目だ!
自分は、このシステムを『信じて!』遣って行くんだ!」と言う
碇シンジ君の如き「中学2年生レヴェル」の者が、今の所、大半だろう。
所で、続編 Black Swan で、取り上げられているのが「オタク的知的偏重主義」と
ガチガチの「経験絶対偏重主義」の対比だが、日本人の世代論に当て嵌めると、
前者が「新人類的な空理空論のアタマデッカチの思考法」、
後者が「旧人類的な、直ぐに時代遅れに為ってしまう様な
前時代の遺物にしがみ付こうとする『頑迷さ』」とも言えよう。
尤も、此れは日本では、90年前後には、良く見られた「風景」だった。
その中間として skeptic な視点が述べられているが、この「懐疑的態度」と
為ると、Dr. Elder の『投資苑』まで遡る事が出来る。
「懐疑論」は必ずしも、「悲観主義」では無いのだが、
「ユングに比べると、フロイトは暗い」と受け止めたがる
日本人の国民性からして、本書日本語版『まぐれ』の今後の
(または、続編Black Swan の日本語版が出版された後の)、
日本人読者のレヴューが、非常に愉しみである。
若しも、「運の良さがすべてです。本書を読んで、益々、其の事を確信しました。」
と言うレヴューを送って来る者が、沢山、居るとしたら、『ランダム・ウォーカー理論』と
合わせて、NNタレブの本を、教典にして、「新興宗教」を始めたら、
相場よりも、もっと「大儲け」出来るかも知れない。
でも、良く考えたら、そう言う「幸運に頼るしか能の無い愚者」で
ある事を、自分で認めている人達って、社会的少数派で、正に
black sawns に近い存在だから、「新興宗教」の信者に
為ってしまうのも当然かも。いや、社会学部出身なもんですから、
そーゆー事とか考えちゃうんですよ。私は。
(2007-05-06)
This book trembles me with excitement. A Financial Times Best Business Book of the Year, the book offers brilliant account and explanation for what I daily feel as an equity analyst, i.e., human's inability to think probabilistically. People's mind is not made to think probabilistically but to think in terms of cause and effect, or deterministically. Ample real life examples exists:including well sounding comments by financial journalists, daily noise offered by stock brokers, and daily investment meeting, or daily story showtime. It is revealing to know evidences of link between such thinking and how our brain works. The author's ability to integrate various science disciplines to support his case is also impressive. Highly recommended.
(2007-04-15)
これ程奥深く幅広い知識と経験を縦横無尽に散りばめた「奇知」に富む本には、そう滅多には出合えないのではないか、というのが正直な感想である。哲学者カール・ポパーに心酔する現役トレーダーが、自らの経験・確率論・哲学・経済学・心理学・古典等々の引き出しから次々と材料を取り出して、Randomnessを軸に持論を展開していく。また、一般に重要だと思われているニュースや「情報」が、トレーディングの観点からは、如何に意味の無い単なる「ノイズ」であるかを説得力ある形で述べている。議論が広範に及ぶ為、浅薄な自分には理解の及ばない部分も多くあると思うが、とにかく常識に囚われない視点が新鮮且つユニークであり、確率やリスクに関して、今までとは全く異なる視点が得られた。新著”Black Swan”の発売が間もなくであるが楽しみである。
(2006-12-20)
著者は現在も米国のコネティカットでヘッジファンドを運用している現役バリバリの運用者です(NYの大学院で非常勤講師をしているそうです)。
毎月こつこつと限定的な損を積み重ね、なるべく稀に大きく儲ける(Out of the money のオプションを買い、滅多に無い市場のショックで儲ける)運用哲学は常識では考えずらく、納得できたとしても実行し続けるのは極めて難しい手法です。この運用方法は金融業界で用いられる確率論の限界を見越した運用で、裏を返すと統計的手法に頼るリスク管理への警告です。なぜそのような限界があるのか、そして運と実力の違いは何か、などについてKarl Popper に心酔する哲学好きな運用者が運用と人生について哲学した本です。